開高健さんの書籍

雨ふらし

2018年04月13日 02:48

雷の続く日には読書感想文など。


だいぶ前の話ですけど、アバサーさんがご来沖された際に釣りの書籍をいただきました。今更ではございますけど、あざっす。
大変失礼ながら、先のご来沖時には仕事でお目にかかれなかったのですけど、Bトラさんが預かってくれて、後日受け取りました。あざっす。

いただいた書籍は開高健さんの本で、「私の釣魚大全」と「フィッシュ・オン」の2冊でした。いずれも釣行記です。
既に何度か読み直しています。理解力が乏しくて、いやはや。
今回は、その書評というか読書感想文です。


その前に、と。
ご周知のこととは思いますけど、開高健(1930-1989年)さんは小説家兼釣り人です。
「サントリーウィスキーの宣伝で釣りをしている人」と言えば、思い出す人も多いかもしれません。
と、BトラさんやLeeさんから習いました。(^_^;)>

書籍を読むに、ABU(特にアンバサダー)大好きな方で、それだけでも親近感がわきます。
釣魚の保全、環境保全を訴え続けた一人で、「キャッチ&リリース」を普及啓蒙したのも開高健さんと言われています。

また、ルアーばかりでなく釣り全般に精通しており、今回いただいた書籍でも幅広い釣りを紹介しています。
釣り、旅、酒、食事、友、そして出会いを臨場感あふれる筆致で描いています。読者は開高健さんの目と筆を通してあたかも「開高健さんの隣で釣りをしている」ような錯覚に陥ることでしょう。

さて、感想文です。



開高健(1996年)「私の釣魚大全」(文春文庫)
※初版は1978年です。




タイトルはアイザック・ウォルトン(1593-1683年)の、「釣魚大全」という世界的なベストセラーから援用したものです。
もっとも援用したのはタイトルだけで、中身は完全に異なります。

「私の釣魚大全」は国内から始まり、海外も含めた釣行記です。
文庫本になってからボーナスでエッセイが追記されているので、かなりボリュームがあってお買い得です。

まず、目次の章題に惹かれました。
「タナゴはルーペで釣るものであること」
「カジカはハンマーでとれること」
読む前は「はぁ? なんのこっちゃ??」と思いましたけど、読み終えてから章題に戻ると実に素直な表現であることが分かります。

個人的には「コイとりまあしゃん、コイをとること」が面白かったです。真似しようとは思いませんけど、こういった達人、匠な人たちはどんどん姿を消していってるのでしょう。その反面、別の形の達人たちが生まれているのでしょうけど、寂しいものがあります。

それから「根釧原野でを二匹釣ること」も良かったです。ドキドキしながら読むことができました。文才のある人は本当に羨ましいです。

また、釣り場に足を運んで、そこで出会う人たちの会話など含蓄があって考えさせられます。開高健さんは本当に楽しむことの達人だと思います。何だか釣りの間中、果敢に攻めています。楽しむために好奇心の赴くまま攻めています。読者はそれを読んで楽しめます。

個人的には、開高健さんの釣り本で一番初めに読んだ方が良いかと思います。非常にお勧めです。



開高健・秋元啓一(1993年)「フィッシュ・オン」(新潮文庫)
※初版は1974年です。



こちらはカメラマンである秋元啓一さん(1930-1979年)との共著となっています。
ですので、「私の釣魚大全」と比べて写真が豊富です。
なお、開高健さんと秋元啓一さんは、新聞社の特派員としてベトナム戦争を体験した戦友でもあります。
この二人が互いに「殿下」、「閣下」とふざけて呼び合う掛け合いは面白いです。

「私の釣魚大全」が国内中心なのに対して、「フィッシュ・オン」は海外での釣行がメインです。
各国の釣り事情などの違いも比較できます(※ただし冷戦時代)。

特に「スウェーデン」の章は面白かったです。ABUの関係者と対話してみたくなります。ついでに僕のABU508を触ってもらえたら最高です。
写真もとても綺麗で、「いつか、ここで釣りをしてみたい!」と思いました。

また、心に引っかかったのは「エジプト」の章。諸般の事情で釣りができません。
それをわざわざ掲載しているのですけど、釣りができなかった腹いせに開高健さんの筆が思う存分この国を腐します。そこが玩具を取り上げられた子どものように真っ直ぐな怒りで、ぐぬぬ感が非常に伝わります(笑)。

最終的に日本に戻っての釣行ですけど、改めて日本の自然の豊かさが分かります。

開高健さんは後に、同じような釣行記「オーパ!」シリーズも刊行していますけど、「フィッシュ・オン」を先に読んでいた方が良いと思います。こちらの方が読み応えがあります(※当社比)。



浅い感想文ですみませんです。

「なぜ人は釣りに惹かれるのだろう?」
「何が楽しくて釣りをするのか?」
そういった疑問に対して、開高健さんはかなり深いところまで答えを出してくれています。(それも1970年代に!)

また、釣り環境に対する保全、問題提起は残念ながら今でも解決されてなく、むしろ益々悪化していると思います。
開高健さんがご存命なら、現状をどのように語るのかは気になるところです。
本件については別の方の書籍でも取り上げている問題なので、いずれ感想文と併せて書いてみたいです。

ともあれ、開高健さんの書籍は再版に再版を重ねて今でも店頭に並んでいますので、釣り好きな方はぜひ購入して読んだ方が良いです。「この書籍に巡り会えて良かった」と思える、お勧めの本です。


今日はこんなところで。

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